第二期=薄茶~濃茶点前を習いだしたら揃えておくとよい道具。
薄茶~濃茶点前や他の点前に進み、始めてから2.3年目、お点前の楽しさと稽古の厳しさも感じられる頃ではないでしょうか。稽古場で行う数少ない点前ではなかなか覚えられない、とも感じられることもあるでしょう。茶盌や茶筅はあるけど代用品では雰囲気が・・・
こんな頃までに揃えたい道具として「水指」や「建水」などがあげられます。
おうちで復習がてらお茶を楽しむことも良いことです。ヤカンやポットでは雰囲気はないし、がんばって風炉釜を揃えたみたいと思われるかも知れません。とりあえずでいいから、と適当な物に手を出す前にここはじっくり、選ぶための基礎知識を身につけることも大切。釜は一生にいくつも手に入れる物ではないと思いますので後悔しない物がお薦めです。
風炉釜水指が加われば、おうちでお稽古が楽しくなります。柄杓や蓋置なども必要です。まずは検索。
「水指」=
国焼の施釉水指を「行」の格付として扱います。その中でも最も格の高いものとして「瀬戸一重口水指」を最上として、その他「国焼の一重口水指」があります。
代表としては「朝鮮唐津一重口水指」「高取一重口水指」などが続きます。これらは場合によっては台子にも使用されその品位を誇っています。「行の真」とも言える物でしょうか。
続く「行の格の水指」は代表は「瀬戸(一重口水指以外)」をはじめ「高取」「唐津」「遠州七窯(朝日、上野、志戸呂、赤膚、膳所」「薩摩」:など施釉国焼陶器です。
「萩焼」などもこの範疇に含まれますが萩は茶碗が主体であり水指の伝世品は少ないでしょう。
※水指に関するくわし説明は、晴山茶道塾で→《茶道塾、水指》
「柄杓」=風炉用、炉用があります。そのほか、台子長板用に差し通しなどがあるほか、流儀によって称する柄杓が決められたものもあります。
※柄杓に関するくわし説明は、晴山茶道塾で→《茶道塾、竹の茶道具》
⑧「蓋置」=
竹の蓋置は、平点前の時から使用できる「侘び道具」の一つです。練習のためにも、ぜひ用意しておきましょう。 季節により、風炉用、炉用があります。そのほか、槍の鞘、棒の先建水用に差し通しなどがあるほか、茶事などの場合青竹のものもあります。青竹は生ものですので使用日の十日前までにご注文下さい。陶磁器や金属で出来たものは、「棚点前」などで使用します。第三期で紹介します。
※蓋置に関するくわし説明は、晴山茶道塾で→《茶道塾、蓋置》
「建水」
材質としては第一に「砂張」「唐銅」「モウル」など金属製の物、これらは勿論皆具の中の物ですが、最初は転用品、利休以後好み物が出てきます。広く「小間」「広間」「薄茶」「濃茶」を問わず使用されます。
最初に揃えるには「利休形唐銅餌畚建水」をお薦めします。全ての流儀共通でお持ちになって良いでしょう。
表千家の方は同じく「不審菴伝来形 餌畚建水」がお薦めです。
※建水に関するくわし説明は、晴山茶道塾で→《茶道塾、建水》
「茶入」
=濃茶の点前になると避けて通れないのが、茶入の扱い。仕覆の扱いなど代用品がないものでもあります。仕方がないので一番安いもので・・・。これが失敗の元。茶入は茶事を行う目的である「濃茶」の入れ物です。稽古用と考えるにしても後々、使い勝手の良いものを選ぶ方が結局はお得です。
※茶入に関するくわし説明は、晴山茶道塾で→《茶道塾、茶入》
「風炉・釜」
現代に於いてはこれは炉釜、これは風炉釜、と明確に分けられ販売されるのが一般的です。
それではこれから釜を求めるのにはどの様な基準で選んだら良いのでしょうか。
現代では古い時代の釜より新作の釜の方が多く出回ってもいますし、価格も安価であるので(勿論例外もあり十職を始め有名作家の作品の中には非常に高価なものもあります)殊に最初に求める釜としては新作を求める事が多いのではないでしょうか。
まずは基本的な釜の形状と種類から考えていきましょう。
※風炉釜に関するくわし説明は、晴山茶道塾で→《茶道塾、釜・風炉》
炉の釜か風炉の釜か
最も最初の問題は炉に用いるのか風炉に用いるのかということがあります。
自宅に炉を切ってあるのでまずは炉釜から、と言う人を除けばほぼ風炉釜から求めるのではないでしょうか。
五徳に据える釜
一般に風炉用の釜は「五徳に据えて用いる」ほうが最初に持つ釜としてお薦めします。現在行われている茶の湯は武家茶道であっても「侘茶」を目指しています。儀式的な切合風炉釜の物よりも「炭手前」の点からも五徳据えの釜を優先した方が良いと思います。
「真形釜」
茶湯で最初に使われ始めたであろう釜の形式、すなわち「切合」に載っていた姿のまま用いているのが「真形釜」です。格式が最も高い釜とされています。
芦屋を頂点として、写物も造られますが、地紋がある物が多いようです。勿論流儀を問わず使用できます。
「利休好」
次いで多く用いられるのが辻 与次郎に利休が制作させた「利休好の釜」でしょう。
概ね無地、荒肌、羽打、鬼面釻付といった特徴があります。
代表的な物として「阿弥陀堂」「丸」「平丸」「万代屋」「尻張」などが挙げられます。
大小により炉・風炉が分けられますが、大きさ以外は、ほぼ相似形です。
「筒釜、富士釜、鶴首釜」
これら「細身の釜」は炉の時期に「釣り釜」としても用いることが出来ます。風炉の釜としても使い勝手が良く、お薦めできる物です。
「切合風炉釜」
茶湯で最初に使われ始めたであろう釜の形式、すなわち「切合」があります。
鬼面風炉、朝鮮風炉、琉球風炉などが挙げられます。またこれらには 鬼面風炉には平丸釜、朝鮮風炉には真形釜、琉球風炉には田口釜、のかつぎ釜といった決りがあります。
これらは釜に合せた風炉がセットになっているので最初に求められる釜として一番多いように思われますが、流儀により鬼面風炉は「真」にのみ用いるとするところもありますし、切り合わせは火が見えないということで夏場用いる方が良いと考える流儀もあります。流儀での使用方法をよく調べてからお求めになるのが良いでしょう。
鬼面風炉
江戸時代には「臺子風炉(台子風炉)」とも呼ばれ、儀礼的な茶の湯にのみ用いられました。表千家では一般に用いません。裏千家では「行」の扱いです。「行台子」で用いても良いのですが、立礼の点茶盤や夏場の風炉かもとして用いる程度で、「初めに持つ風炉釜」としては当店としてはあまりお薦めできません。
武家茶道では比較的多く用いていますが、一口あれば十分で、二口目からは別の物がよいでしょう。最初はお稽古用で鉄、後から唐銅のという揃え方は勿体ない方法です。
石州流では「石州好、唐銅鬼面風炉真形釜添」という皆具と一式になったものがあります。
朝鮮風炉
切合風炉釜として鬼面の次にあらわれるのが「朝鮮風炉」のようです。その出現はどうやら桃山期にはさかのぼれないようですが、儀礼的な面は緩和されより軽く用いられます。表千家ではよく用いられています。裏千家では「行」の扱いです。「行台子」で用いても良いのですが、立礼の点茶盤や夏場の風炉かもとして用いることなどは鬼面と変わりません。ただこの風炉に用いる釜は原則「真形釜」ですので、釜だけ風炉に用いても良いでしょう。ですから、二通りの使い方が可能です。
武家茶道でも、用いる物で最初に購入しても悪くはないでしょう。
琉球風炉
千家十職の釜師、大西清右衛門さんの大西美術館には「北向道陳」所持という「立休庵風炉(琉球風炉)」には表千家の覚々斎が「田口釜」を添えています。以後表千家での好も多くあります。他流で用いることもかまいませんが、表千家の好物でないことを確認して用いましょう。この系統に属する物として山田宗偏好「箆(のかつぎ)釜」の載った唐銅丸風炉などがあります。
表千家
表千家は道具に関して「基本形」を大事にする傾向が見られます。利休好を中心に扱うことが多いようです。
季節によっても使い分ける場合も多く、初風炉では「土風炉」を用い格式の高い釜を五徳に据えて用います。
盛夏が近づくと「朝鮮風炉」や「琉球風炉」を暑気を払う目的で用いますが同じく切合の「鬼面風炉」は用いません。「朝鮮風炉」や「琉球風炉」通年で用いています。
九月には「天然忌」が御家元で行われますがこの時に用いる風炉釜が「鳳凰風炉に透木富士釜」の取り合わせです。
風炉の終わりには「鉄風炉」を用いますが多く見受けるのが「鉄道安風炉」に「了々斎好刷毛目姥口釜」を載せて扱います。
これはあくまで「不審菴(表千家御家元)」での行事や茶会で用いられているもので、一般のお茶人はもっと自由でよいとも思うのですが・・・・。
裏千家
表千家に比べ自由度が高いのが裏千家の取り合わせと言って良いでしょう。「基本」を崩すのではありませんが、選択肢が豊富であると言うことは言えるとお思います。
季節によっても使い分ける場合も、初風炉に限らず「土風炉」を用いる事を基本としています。格式の高い点前も「土風炉」に釜を五徳に据えて用います。
もっとも表千家と違い土風炉全てに「鱗灰」をしなくとも良いので通年で使用する場合が多いことも確かです。
盛夏が近づくと表千家同様「朝鮮風炉」や「琉球風炉」を暑気を払う目的で用いますが、表千家と違い「鬼面風炉」も用いてもかまいません。ただ初風炉や名残の時期においては基本的には用いない方が良いと思います。
この時に用いる風炉釜に「透木風炉」があります。裏千家では「盛夏」の風炉釜として用います。
風炉の終わりには「鉄風炉」を用いますが「藁灰」を行う「窶(やつれ)風炉」(欠け風炉ともいう)を用いる事があります。侘びた風情を好んでのことです。
裏千家では点前として「五行棚」を用いるのもこの時期です。これには土風炉を用いる事が決まりとなっていますので、鉄風炉に固執はしません。
いずれも載せやすい釜が理想ですから「これはダメ」が少ないのも裏千家の特徴かも知れません。
石州流・ほか各流儀用
「鬼面風炉」があれば石州は大丈夫。ではないのです。鬼面風炉しか使わないと噸違いをされている形が多いのも悲しい事実。石州公の御好にも多くの風炉用の釜が存在します、。石州公の師匠、桑山宗仙の師は「千道安」道安風炉は「土風炉」です。これに釜を五徳に据えて用います。
風炉
土風炉
侘茶の普及、流行に従い唐銅の形状を模した透木風炉から始まる土風炉が主流になります。勿論当初は前の項でもお話しした切合の釜を透木を入れ掛ける形式の物でしたが後に五徳が発明されると様々な風炉が造られるようになります。
江戸の初期には風炉と云えば例外を除いて土風炉を指すようになります。
金属製の風炉でなく瓦焼の手法を用いた素焼(黒陶)の陶器で造られた土風炉がより侘茶に見合うものとして俄然注目されるようになります。
江戸初期の文献には書院には金風炉(切合風炉)四畳半(小間、侘茶の意)には土風炉と規定されるようにまでなります。
形状としては釜に合わせ土風炉は造られていましたが、やがて定型化していきます。
一例を挙げると透木の面影を残す眉風炉、前切りの典型の様になってしまった道安風炉、雲龍釜を載せるために作られた雲龍風炉、紅鉢風炉、透木風炉などが代表ではないでしょうか。
唐銅風炉
ほか唐銅風炉の系統では、遠州の色紙風炉、これは先ほどの鉄の窶れ風炉が利休の創意として窶しの姿を現したものだとすると、綺麗さびを標榜する小堀遠州が表現する「窶し」が「色紙風炉」ではないでしょうか。
江岑好の鳳凰風炉は既に秀吉に献上されていたともいわれる土風炉の鳳凰風炉を唐銅に移したとの説があります。
近年ではより多く見掛ける唐銅や鉄の前切風炉(面取や道安など)や眉風炉、紅鉢風炉などの風炉は土風炉の形状を模倣した物です。本来は土風炉ですので、裏千家の方には土風炉の方をお薦めします。
鉄風炉
勿論当初から鉄で好まれた風炉も多くあります。
石州の三日月風炉、玄々斎の常盤風炉(鉄)等の他多くの好みがあります。
真行草の扱いや手分けは流儀により若干異なりますので詳しくは述べませんが板風炉、鉄風炉、窶れ風炉は何れの流儀でも草として扱います。
灰形
風炉釜を揃えたら、次にしなくてはいけないのが「灰形」です。
「エ~ヤダ~」という声が聞こえるのを知りつつおすすめをします。
"灰形"はなぜめんどくさいのか。という命題に突き当たります。
せっかく出来かけたのにひびが・・ |
茶湯で何が一番面倒か(またはいやか)というと多くの人が「(風炉の)灰形」とおっしゃるようです。灰形の習得は大事な稽古なのですが、苦手な方が多いのも事実でしょう。その理由を考えると
※習う機会がない → あってもたまに、または一度きり → 正しいやり方がわからない
→ うまくできない → 時間が掛かる → つまらない → 二度としたくない。
といった具合ではないでしょうか。では、どうして時間をかけてもうまくできないのでしょうか。それはあなたが「未熟だから」「不器用だから」ではありません。
一番の問題は「灰が悪かった」ことなのです。
「手間の掛かる手入れがいるのでは」従来の考え方では、時間をかけなければよい灰が出来ない、よい灰が出来なければ、灰形もうまくいかない、と考えられていました。
今回ご紹介するのは、茶湯 晴山が三十年の灰研究の上にたどり着いた、
お手持ちの灰を「手早く灰形の作りやすい灰に変える」方法です。
ではどうしたらよい灰を手にすることが出来るのでしょうか。
この話の続きは全国各地でも開催している「茶湯・晴山灰研究会」で聞いていただくとして、まずは灰を細かくふるっていただくことが肝心です。
そのためには適正な灰篩が必要となります。