裏千家
表千家ほどではありませんが、まずは「前切風炉」「雲龍風炉」、真夏には「朝鮮・琉球風炉」に加えて「鬼面風炉」も使えます。
あるいは「透木風炉(「鳳凰風炉」を含む)」、九月には再び普通の五徳のある風炉、十月の名残に「鉄風炉(窶れ風炉に藁灰)」といった具合です。
それ以外に、茶箱には「瓶掛け風炉」真台子には「眉風炉(土)」なども用いています。
もちろん一般のお稽古場でこれほど揃えることは難しいと思いますし、その必要もないでしょう。
裏千家で用いたい風炉は何でしょう?
ズバリお答えします。裏千家の方は「土風炉」こそ必要且つ充分な風炉です。
裏千家では年中使用してかまいません。
初風炉はもちろん、極侘びの10月でも「五行棚」には「土風炉」を入れる決まりになっていますし、台子の点前も土風炉が相応しいとされています。
間違いだらけの風炉選びが横行?!
しかしながら、廻りの方々(先生や、お社中、お友達)が持っている中には「唐銅風炉」が多くありませんか。
御家元では切合と好物を除けば「土風炉」しか使わないともいわれる程なのですが、多くの稽古場で見かける物に「唐銅道安風炉」「唐銅面取風炉」果ては「唐銅眉風炉」まであります。これが普及する理由にはいくつか考えられますが、上げてみますと
1.釜とセットで販売
釜を買うときにセットで求め、金工師の範疇として風炉も制作、取り合わせて販売していたことに起因すること、がひとつ。
2.土風炉が壊れやすいという風説。
普及品の土風炉などは表面に漆をかけ仕上げるため、熱に弱く長時間使用すると漆がひび割れ欠落するとこから「壊れる」と誤解され伝わったこと。
確かに素焼きに近い陶器ですから、釜をぶつけたり、輸送方法が悪ければ壊れたりしますが、私も三十年近く稽古に使用している土風炉は未だに壊れていません。
3.それにしても土風炉は高価だ、説。
三十年ほど前迄は、土風炉師といえば「寄神崇白」「山崎宗元」が知られていました。
それぞれ、逸品物、お好物の風炉を手がける作家さんでしたから、当時でも25~60万円ぐらいはしていたと思います。一方唐銅風炉は3万円程度からありましたのでその開きは大きかったでしょう。
小売店側も知識に乏しく、仕入先も釜の仕入れと同じ所といった事情もあり、安価な普及品の土風炉を扱っているところは少なかったと記憶しています。
それは、はっきり言えば売る側に知識がなかったということでしょう。
近年ようやく、九州の伊東征隆さんが復活させた「蒲池窯」が登場しました。
「本黒焼土風炉」の名手でありながら普及品も手がけています。
それまでは、土風炉にはまず手を出さない、という考えが大半を占めていました。
しかし、近年は原料の高騰から唐銅風炉も値上がりしています。その差は小さくなっているといえるでしょう。
また、お稽古用の土風炉もあります。
4.切合は灰形が見えないから。
女性はとかく灰形が苦手なようで、他人に見られることを嫌う傾向にあります。
普段お稽古には見えない方が楽だから、という理由。
実際に灰形をする場合、切合の風炉の方が技術を要する物なのですが。
といったことが上げられます。
とにもかくにもこれから裏千家を学んでおられる方が風炉をお求めになる際には「土風炉」をお薦めします。
特に真台子に用いる眉風炉は何があっても土風炉の物です。