「風炉釜」
現代においてはこれは炉釜、これは風炉釜、と明確に分けられ販売されるのが一般的です。
それではこれから釜を求めるのにはどの様な基準で選んだら良いのでしょうか。
現代では古い時代の釜より新作の釜の方が多く出回ってもいますし、価格も安価であるので(勿論例外もあり十職を始め有名作家の作品の中には非常に高価なものもあります)殊に最初に求める釜としては新作を求める事が多いのではないでしょうか。
炉の釜か風炉の釜か
最も最初の問題は炉に用いるのか風炉に用いるのかということがあります。
自宅に炉を切ってあるのでまずは炉釜から、と言う人を除けばほぼ風炉釜から求めるのではないでしょうか。
誰が造った釜か(作者を選ぶ=値段帯の決定、値頃で良いものを手にするために)
次ぎの問題は、どのような作家の作比を手に入れることが出来るか。ということがあります。
晴山に聞かれるとしたら、「古作で作のしっかりしたものが一番よいでしょう。」と答えます。ただし、それらの釜は当然今生産はしていませんし、この形がほしい、といってもよほど探さなければ見つからないでしょうし、よいものは値段も張ります。もちろんお望みならお探ししますが・・。
でも、これからお稽古のために使いたい、風炉、釜ですので出来るだけ早く手にしたいのが人情です。出来れば安価で手にしたとなると、やはり現代作家のものが求めやすいものです。以下の手順に従い、釜を選んで下さい。きっと永く楽しんで頂け満足できる風炉釜が手に入ります。
予算
釜は茶碗などの陶器と違い、まず壊れることはないので永く使用することになります。またほかの茶道具に比べると大きく、重く、片付ける場所も気になりますので、数多く持つことは少ないと思いますので、慎重に選んで頂きたいものです。ではいくらぐらい用意したらよいのでしょうか。まずは釜のみの金額で考えていきましょう。
◎3万円以内
残念ながら、釜を手にすることは・・・。慌てず時が来るのを待ちましょう。 (風炉とセットで5万円まで)
◎3~10万円
とりあえずお稽古に向く釜は手に入れることは出来ます。将来的には物足りなくなるかも
(風炉とセット15万円まで)
◎10~15万円
始めて釜を求められる希望価格として一番多い価格帯ですが・・・意外と中途半端。
そこまでお考えならもう少しがんばってみてはいかがでしょうか。
◎15~25万円
できれば、これぐらいの予算をみてもらうと、一生楽しめる釜が手に入るとお思います。
◎25~50万円
これぐらいの予算をお考えなら、新作でなく古釜の良いものが出るのを待ちましょう。
値段帯によるお薦め作家
◎3~10万円
比較的錆びにくく、日頃の稽古でも惜しげなく使え、種類が豊富であること。
1. 菊地政光(山形)現代作家の中ではもっとも多くのバリエーションを持ち、比較的安価で、 錆びにくい仕上げで定評です。 (風炉用釜=46.000~49.000上代)
◎15~25万円
使っていて飽きず、良くなる釜。古作を再現する表現力などが求められる。
1. 般若勘渓(富山)古作写しの名手。多くのバリエーションを持ち、作品により釜膚を替える技術は
他の追随を許さない。 (風炉用釜=210.000~290.000上代)
茶湯・晴山では、豊富な選択肢や、製品のコストパフォーマンスの上から厳選し、上記の二人の作家をお薦めしています。
※次いで基本的な釜の形状と種類を流儀におけるとらえ方も交え考えていきましょう。
五徳に据える釜
一般に風炉用の釜は「五徳に据えて用いる」ほうが最初に持つ釜としてお薦めします。現在行われている茶の湯は武家茶道であっても「侘茶」を目指しています。流儀を問わず、儀式的な切合風炉釜の物よりも「炭手前」の点からも五徳据えの釜を優先した方がお薦めできると思います。
茶湯で最初に使われ始めたであろう釜の形式、すなわち「切合」に載っていた姿のまま用いているのが、「真形釜」です。最も格式が高い釜とされています。裏千家では「真台子」には必ず用いることが決まりです。
芦屋を頂点として、写物も造られますが、芦屋の釜に習い地紋がある物が多いようです。勿論流儀を問わず使用できます。風炉用ですが、朝鮮風炉に用いられる真形釜より大きめです。原形は羽がありますが、羽打ち(羽を落としたもの)も同様の扱いです。
辻 与次郎に利休が制作させた「利休好の釜」でしょう。概ね無地、荒肌、羽打、鬼面釻付といった特徴があります。
代表的な物として「阿弥陀堂」 「丸」 「平丸」 「万代屋」 「尻張」などが挙げられます。
大小により炉・風炉が分けられますが、大きさ以外は、ほぼ相似形です。
利休好の中でも人気の高いものが「雲龍釜」です。皆口筒釜で、利休好に大中小の三種、ほかに少庵好、仙叟好、四方などバリエーションも多くあります。この釜に合わせた風炉が「雲龍風炉」この取り合わせは古来から茶人に好まれ使用されてきました。
これら「細身の釜」は炉の時期に「釣り釜」としても用いることが出来ます。風炉の釜としても使い勝手が良く、お薦めできる物です。
切合風炉釜
茶湯で初期に使われ始めたであろう形式で風炉と釜がセットとなった形=「切合」があります。
鬼面風炉、朝鮮風炉、琉球風炉などが挙げられます。またこれらには 鬼面風炉には平丸釜、朝鮮風炉には真形釜、琉球風炉には田口釜、のかつぎ釜といった決りがあります。
これらは釜に合せた風炉がセットになっているので最初に求められる釜としてかつてはよく勧められており、すでに持っておられる方が一番多いように思われます。
ただし決まりがあり、流儀により鬼面風炉は「真」にのみ用いるとするところもありますし、切り合わせは火が見えないということで夏場用いる方が良いと考える流儀もあります。流儀での使用方法をよく調べてからお求めになるのが良いでしょう。
切合風炉釜として鬼面の次にあらわれるのが「朝鮮風炉」のようです。その出現はどうやら桃山期にはさかのぼれないようですが、儀礼的な面は緩和されより軽く用いられます。とくに表千家ではよく用いられています。裏千家では「行」の扱いです。「行台子」で用いても良いのですが、立礼の点茶盤や夏場の風炉かもとして用いることなどは鬼面と変わりません。
またこの風炉に用いる釜は原則格式が最も高い釜とされる「真形釜」ですので、釜だけ五徳に据えほかの風炉に用いても良いでしょう。(※風炉釜としての真形釜よりは小振りに出来ています。)ですから、二通りの使い方も可能です。
「真形釜」は芦屋を頂点として、写物も造られますが、芦屋の釜に習い地紋がある物が多いようです。勿論流儀を問わず使用できます。 武家茶道でも、用いる物で最初に購入しても悪くはないでしょう。
江戸時代には「臺子風炉(台子風炉)」とも呼ばれ、儀礼的な茶の湯にのみ用いられました。表千家では基本的に用いません。
裏千家では「行」の扱いとして用いることがあります。「行台子」で用いても良いのですが、立礼の点茶盤や夏場の風炉かもとして用いる程度で、「初めに持つ風炉釜」としては当店としては積極的にはお薦めしていません。
武家茶道では比較的多く用いていますが、一口あれば十分で、二口目からは別の物がよいでしょう。最初はお稽古用で鉄、後から唐銅のという揃え方は勿体ない方法です。
石州流では「石州好、唐銅鬼面風炉真形釜添」という皆具と一式になったものがあります。
千家十職の釜師、大西清右衛門さんの大西美術館には「北向道陳」所持という「立休庵風炉(琉球風炉)」には表千家の覚々斎が「田口釜」を添えています。以後表千家での好も多くあります。他流で用いることもかまいませんが、表千家の好物でないことを確認して用いましょう。この系統に属する物として山田宗偏好「箆(のかつぎ)釜」の載った唐銅丸風炉などがあります。
人と少し違ったものが持ちたい、個性的な釜がいい、と思っていらっしゃる方にお薦めできる物です。
ただし、流儀の好物もあり、注意したいものです。
古作釜
芦屋釜や天命釜、時代が下ると云っても江戸初期までの釜も求められるならこれに越した事はありませんが現在それらを容易に入手し日頃から使えると云うものでもないかもしれません。
古作釜はその製法や使用する鉄の違いにより肌合、風合い錆の具合など時代を経たものの良さがあります。古作釜はかつては、初底(うぶぞこ)と云い、鋳られた当時の物を好とする考えが主流でした。しかし痛んだ底のまま用い点前中に漏ってしまったと言う苦い経験は我々にもよくある事です。
また最近では残念ながらこう云った古作釜写しの新作を古作と偽って出回っているものもありますので、厳しいくらいの鑑識眼を持って望みたいものです。
時代の釜の場合は一部名品の例外を除き、底直しすなわち底を入れ替えたり修復をきちんとしてある釜の方がむしろ安心できます。
古作釜を求める場合は洩れや傷みなどを充分に確認できる古作釜の知識のあるお店で求める事が肝心でしょう。またその前に皆さん自身がしっかりと釜の知識と見る目を持った目利きとなる事が肝要です。
それには何処へでも出掛けて行って「本物」を出来るだけ数多く見、可能なら持ってみて覚えて行くものではないでしょうか。これはあらゆる茶道具にう言える事でありまた、伝統を継承する物の多くはクッラシックが基本となりその基礎の上に前衛が生まれるのではないでしょうか。
晴山では今までも多くの古作釜を扱っております。質の良い時代の釜をお値打ち価格で提供して参りました。展示会やご要望に応じ、お探しすることが出来ます。