掛軸の予算
軸(掛け物)は茶碗などの陶器と違い、まず壊れることはないので永く使用することになります。後々飽きが来たり、気後れするようなものでは、安物買いのなとやら、初期投資に、若干かかっても無駄のない選び方が肝要です。
またほかの茶道具に比べると茶湯だけに用いなくとも日頃も使えます。また、片付ける場所も巻いて箱に納められるので気になりませんので、数多く持つこともあると思います。かといって何かよく分からないものを手にすることは避けたもので、慎重に選んで頂きたいものの一つです。
では、予算としたらいくらぐらい用意したらよいのでしょうか。
◎1万円以内
残念ながら、直筆を手にすることは・・・。慌てず少し資金が貯まるのを待ちましょう。茶道具は、実用品でもあります。将来、茶事茶会にも使えるものを手に入れるに越したことはありません。
単に語句を覚えるだけなら「色紙・短冊」という手段もあります。色紙・短冊掛けに入れて使用します。
◎2.5~5万円
とりあえずお稽古に向くお軸と考える方が無難でしょう。勿論御筆は「大徳寺系統」のお寺のご住職が茶湯では相応しいものです。署名に「前大徳(さきのだいとく)」と書かれているものが凡そ、それにあたります。大徳寺末寺の和尚さん方が多くお使いです。
茶席でのお軸はまずは何が書いてあるかより、「誰が書いたか」がより重要になります。
軽い茶会(市民茶会・おさらい会など)などには使用は出来るでしょう。おそらく将来的には物足りなくなるかも知れません。
前述の茶会などに用いるにしても思い切って「季節の語句」を用いるのはどうでしょうか?まさに一期一会を演出するには効果的な方法です。
※茶会批評の一例
季節の語句を使った場合
「今日のご亭主、初めてのお席だそうだけけど、今日にぴったりの語句で良かったわね。」
無季の語句を使った場合(いつでも使える一般的な語句・一期一会や喫茶去など)
「いくらデビューでも、前大徳はないわよね、稽古の軸を出したのかしら・・・」
ほぼ実話です。時候も重要な要素という意味も大きいということです。誰がが大事と言ったことと少し矛盾するようですが、投資を生かす手段の一つです。
◎5~8万円
始めて茶湯のための掛け物を求められる希望価格として一番多い価格帯です。ここでも価格帯ではなく「お人」をポイントで考えると良いでしょう。
おすすめは前述のように「大徳寺系」となるのですが、「大徳寺塔頭ご住職」のものが手に入る価格帯でもあります。「紫野」と署名のあるものが多いでしょう。
ただし、一部の方を除けば「ネットでの販売」を嫌われる方が多いことも事実、お願いする身としては、ご無理も申し上げられないので、茶湯・晴山を信用して、語句と御老師を指定して頂ければ、対応いたします。ご相談下さい。
これも茶会で使うとなると、「季節の語句」がご馳走となります。何かの折に季節に関係したものを少しずつ増やして行かれたらどうでしょう。
まずは四季の四本、ふた月使えるように六本、といった具合に増やしていけると良いですね。
◎8~15万円
近年の軸では大徳寺住持(大徳寺代○○○世にあたる。ex,大徳寺511世立花大亀老師など)の老師方のものも含まれますので、ちょっとしたお茶会でも楽しめる軸も手に入ると思います。
ただし、語句は指定することは出来ない物も多くあります。
◎15~25万円
できれば、これぐらいの予算をみてもらうと、ちょっとしたお茶会でも楽しめる軸が手に入ると思います。
ここでは大徳寺以外の「禅宗本山の管長」クラスのものなどがあります。京都五山、鎌倉五山あたりのものがこれに相当するでしょうか。
◎25~50万円
これぐらいの予算をお考えなら、新作でなくやや古い大徳寺管長クラスの良いものが出るのを待ちましょう。無季の語句でも十分通用します。
新しい当代、先代の大徳寺管長のものはもう少し値が張るようですが。
◎御家元のお軸
流儀にもよりますが、裏、表千家ですと100万円~120万円くらいでしょうか。少し前のものですともう少しお手頃なものもありますが、「偽物」も多い世界です。お気をつけ下さい。贋物、偽物を一点でも扱っている店では、疑ってかかっても良いでしょう。