茶湯・晴山監修・伝統工芸・村上木彫堆朱 唐物写漆器茶道具のご紹介
「堆(つい)」という字には『積み重ねる』という意味があり、堆朱は朱色の漆を厚く塗り重ね、山水や花鳥を浮き彫りにしたものです。
対して新潟県村上市の村上木彫堆朱は、芯になる木地に彫刻を施し、そこに漆を塗るという技法が採られています。この技法は江戸時代に編み出され、漆の無駄がないこと、躍動感のある彫りや細かい地紋まで表現できる、という特徴があります。
鎌倉彫に似た技法を用いていますが、仕上がりはより「唐物」を目指した仕上がりになっています。
歴史
室町時代の文安年代よりこの地域近辺に耕雲寺、龍皐寺などの寺院が建立されていた。その際、京都から来ていた大工や工芸師などがその事業に加わったことが当漆器の起こりとされている。
村上頼勝が藩主の時(1598-1604)、寺院の建築が盛んになった。 江戸時代に入り、元和には城郭や武家屋敷の改築、建設が進められ、それは寛文まで続けられた。京都から木匠伊太郎などを招聘し、村上で彫刻の技術が高められたのはこの頃とされる。
寛文2年に羽黒神社が再建となり神輿に漆工芸を施す必要があったが、これも京都から職人を招いている。寛文7年、榊原政倫の時代に藩士の荒山市右衛門が漆奉行になったという。同時にウルシを植樹させている。
文政の時、江戸詰であった村上頓宮次郎兵衛は堆朱の名工、玉楮象谷を師匠 に彫刻を学び、同藩士の澤村吉四郎も加わって世に聞こえた才能を乞うた。
天保年間に江戸詰となった澤村吉四郎が、久松老松軒、岩村太郎左衛門などに教示し彼らがその漆工を持ち帰った。藩の工芸奨励政策もあり工匠達の間で広まった。板垣周左衛門(後に苗字帯刀を許され有磯周斎となる(1,805-1,879)は、中国風の図案を 加味して品位の向上を図り、鎌倉彫りの彫法を改良するは技巧の向上、また、活発に販路の拡大に努め、漆器を村上の特産品にし、今日の村上漆器の基礎を固めたとされる。慶応年間に仏壇、仏具にも加工を広げ世間に広まって行った。
明治に入って漆業は一種の道楽から生業となり元士族の間でも行われた。 その後需要が増加するも、濫造する結果を招いていた。そこで周斎の子、周亭や山脇長平などが明治26年に村上工芸社を組織、技術の進歩と販路拡大を図った。
技法
素地に使用される材は、箱物に朴・檜・くさまき、挽物【ひきもの】には栃・朴・欅などである。彫刻は各種の刀を使い分けて行なわれ、図柄は中国画風の楼閣山水【ろうかくさんすい】や花鳥模様が多く村上堆朱の特色であった。何回も漆を塗り、研ぎ出す作業を繰り返すが特に指先に漆をつけて塗るその彫刻をより引き立たせる指頭(しとう)塗りという独特の塗りの技法を用いる。最後に毛彫りをして最上の透き漆を摺【す】りこんで磨き上げる。
現在、生産されているのは杯・皿・重箱・鉢・茶筒・なつめ・菓子器・盆・箸・花器などがある。 昭和51年2月には、伝統的工芸品として通産大臣の指定も受けている。
茶湯・晴山の監修に応えたのが、村上堆朱きっての名工「尾崎吉蔵氏」です。
江戸時代から続く村上木彫堆朱のあらゆる技術を習得された尾崎吉蔵氏は単色の堆朱ばかりでなく、唐物彫漆器の中でも最高級の技法とされる「紅花緑葉」をもこなす名人です。
同じ木彫り漆器である鎌倉彫に対してまだまだ知られては居ませんが、素朴な鎌倉彫に比して、拡張を重んじる茶道具において唐物を基調とする「村上木彫堆朱」はより優れていると言ってよいと思います。
また、その技法の丁寧さからも比較的安価であると入ってもよいでしょう。
茶道具として用いるためには「コロ・ナリ」といわれる大きさや姿が茶道具として適しているばかりではなく「品格」も必要です。
多くの伝来の唐物香合は、その両方を備えた格調の高い物です。
ことに徳川家の伝来の物は其の中でも「宝物(ほうもつ)」と言ってよいでしょう。
これらの物を村上木彫堆朱で尾崎吉蔵氏により再現して頂きました。是非とも本物の感覚をお手元に置き、お稽古にお茶会にお使い頂ければ幸いです。
作歴
初代 尾崎三蔵が大正七年に創業 二代 尾崎吉蔵 昭和二年 新潟県村上市生まれ 昭和二十年より初代三蔵に師事 昭和五十三年 新潟県新作家具・漆器コンクール 新潟市長賞 昭和五十九年 日本漆器共同組合連合会 漆器産業振興賞 新潟県推奨品コンクール一位入賞 昭和六十年 同 新潟県県知事特別賞 昭和六十二年 一級技能士 平成三年 第三十三回全国推奨品大会日本商工会議所 会頭努力賞 平成六年 伝統的工芸品産業振興協会 会長賞 平成二十年 日本伝統工芸士会 会長賞 平成二十三年 日本商工会議所全国観光土産品連盟主催 日本専門店会連合会会長賞
大名物 徳川美術館蔵 居布袋堆朱香合 15c明代 素裏針彫 「銭鎮造」
徳川美術館蔵 居布袋堆朱香合 15c明代 「銭鎮造」 |
この彫漆の茶道具は、徳川美術館蔵のものの写です。
徳川家伝来・紅花緑葉 唐花鴨紋香合(16~17c明代)
紅花緑葉 唐花鴨文香合(本歌) 16-7c明代 徳川美術館所蔵 |
徳川美術館所蔵「紅花緑葉 唐花鴨紋香合」の写です。紅花緑葉と呼ばれる複数の漆を用いた技法で作られています。
茶湯・晴山の企画により、村上堆朱の第一人者「尾崎吉蔵師」に再現して頂きました。
格調高い「紅花緑葉」は朱漆・青漆(緑色)黄漆と多色を用いた雰囲気は村上堆朱以外では表現できないかと存じます。
彫漆の中でも最も、高級品とされる全面彫りを施したこの香合の姿は、本歌と見比べ頂ければ実感できるかと存じます。
徳川美術館蔵 松下人物観月文香合 15c明代 素裏針彫 「楊茂造」
徳川美術館蔵 松下人物観月文堆朱香合 15c明代 素裏針彫 「楊茂造」 |
この彫漆の茶道具は、徳川美術館蔵のものの写です。
俗塵をはなれ山中に隠棲し清遊することは中国文人の常に求めたことでした。月を眺め自然を感じつつ、仙境に浸る高士の姿を現したデザインとなっています。明代の名手「楊茂」の作品を写しました。
徳川美術館蔵 紅花緑葉 牡丹紋香合 16c明代 (本歌) |
この彫漆の茶道具は、徳川美術館蔵のものの写です。
相国寺伝来 居布袋唐子図 堆朱香合 15c明代
この彫漆の茶道具は、相国寺蔵のものの写です。