客の持ち物(帛紗、懐紙、茶席扇子、帛紗挟・数寄屋袋)
帛紗は稽古を始めたとき最初に手にする茶道具と云っても良いでしょう。
帛紗とは、茶湯で、点前の際に茶器を拭いたり、拝見の折に器物の下に敷いたりする方形の布のことで、「服紗」、「袱紗」などとも書きます。
袱紗物ともいい、また神聖な茶道具を清めるためのものですので「不洗布」と書いて「ふくさ」と読ませるほどで、「基本的には洗わない」すなわち使い切りの物とされています。
材質・色
裂地は主に先に述べた塩瀬(畝のある羽二重)で、男は紫色、女は朱色、老人(五十才以上)は黄を基本とし、染柄も趣向で用いられます。
女性が緋色のものを用いるのは口紅などが付着しても差し支えないようにともいわれますがどうでしょう。
裏千家においては各種の色無地のほか玄々斎好みの斜子の帛紗は許状の段階により使い分けることになっています。ほかに、ぼかし染めや友禅染めのものも用いられます。
流儀により「染帛紗」とも呼ばれる家元の紋や模様のついたもが用いられる事もあります。
出帛紗は、濃茶のとき茶碗に添えて出す帛紗で、用いられる裂地は名物裂などで、大きさは流儀により異なり、表千家や武者小路千家では古帛紗は使わず、使い帛紗と同じ大きさのものです。
裏千家では出帛紗には主に古帛紗(寸法が五寸二分×五寸で出帛紗より小さい)を使いますが、これは玄々斎による発明品で当初は「五寸×五寸」の正方形でした。この大きさは「土田友湖」さんが踏襲しています。
現在一般に見られるのは「五寸×五寸二、三分」のものです。これは先に述べた古い時代の帛紗、藪内流などに見られる「一尺×一尺五分」の帛紗を四ッ折りにしたものとほぼ同寸です。「古帛紗」というのは古いサイズの帛紗を敷帛紗として用いる四ッ折りの大きさを採り名物裂などを用いてこしらえたものという解釈が出来ます。
座って挨拶をするときに、胸元から畳んだ状態の扇子を自らの膝前に置き、それを境にするように相手に礼を行います。これは扇子に自他のさかいをつくる結界としての役割をもたせたものとの考えからです。
茶湯では、初めて室内で扇子を用いたのが足和義政と伝えられ、特に「茶扇」とよばれました。
江戸時代に入ると流儀や茶人の好物が生じます(茶家好扇図録集)。現在は男性用は八寸または六寸、女性用は五寸、表千家は男女とも六、五寸としています。
現在は木や竹の骨は塗りを施したものや木地のままのもの、地紙は白、色無地のほかに絵や利休百首、花押集などを描いたものがあります。
和紙を贈り物にする風習は、公家社会に始まり、武家社会にも引き継がれ、「一束一本」とも言われ、武家社会では、杉原紙を愛用したため、杉原紙一束(十帖)に扇子を一本添え贈り物としました。
このような仕来(しきた)りは、やがて茶湯の中にもにも浸透していき、新年などに師匠から弟子に、新しい懐紙に扇子を添え、初釜の引き物とする習慣が生まれたと思われます。
貴族は常に懐に紙を畳んで入れ、ハンカチのような用途の他に、菓子を取ったり、盃の縁をぬぐったり、即席の和歌を記すなどの用途にも使用し、当時の貴族の必需品でした。
懐紙は「ふところがみ」や「かいし」、また、畳んで懐に入れる所から「たとうがみ」、「てがみ」と称し、後には和歌などを正式に詠進する詠草料紙を意味するようになりました。
男性は檀紙を、女性は薄様の斐紙を使用するのが慣習となり、正式の詠草料紙には色の違う薄様を二枚重ねて使用しました。
手漉きの美濃紙を小菊紙といい、これを懐に入れて茶席などで使ったことから「懐中の小菊紙」=「懐紙」となったようです.茶会に行く時に持って行くものを織り込んだ和歌があります.
「茶にゆかば 小菊に帛紗 扇子足袋 茶巾手拭 香と小袋」この小菊が懐紙のことです.
紙の単位一帖は四十八枚でしたが、現在は三十枚が一束のなっています。
近世の発明品です。お稽古はもちろん茶会にも着物で行かなくなり、結果「懐中」がなくなり行き場を失った「懐中品」が存在場所を見出したところ。というのが本項での解釈です。
流儀によりこれを必ず持参し席中で使用するように指導し、茶事にも用いるところがあるようですが、
因ってこれを女性はよく「お太鼓」に入れて居るのを見かけます。「ランドセルじゃあるまいに」と怒られたものです。ましてや男性は広い懐にでもしまえというのでしょうか。そうでなく手に持って行くとすると、「雨の日の夜咄茶事の正客は数寄屋袋は口に咥えて移動するのでしょうか?」と意地悪を云いたくなります。
お稽古には便利なものですし、茶会などにも用いて構わないのですが、茶事で云えばあくまで「袴付け」までの携帯品、風呂敷に包み「乱れ籠」に入れておくものと心得ましょう。席中に必要なものは「懐中に」が原則です。
楊枝入・茶巾入・袖落とし・残滓入・足袋入・風呂敷
そのほか茶会や茶事には、持って行くと便利なものも多くあります。
「楊枝と楊枝入」は茶事であれば先に述べた黒文字は亭主が用意しますが、大寄せの茶会などでは自分用の楊枝を持参するのが一般的です。但し、黒文字が用意された茶会であえて持参のものを用いることは非礼に当たります。足袋を改めるのは袴付けや寄付待合で行いますので道中の上着など席中で不用なものと一緒に風呂敷で包み、乱れ籠などに置いておきます。
稽古着
日頃のお稽古では、置物での参加が理想ですが、様々な理由で難しいと思われます。
茶湯の点前は着物での所作を基本としますので、お稽古には簡易の「稽古着」があると良いでしょう。
ベストタイプの物から二部式の着物風の物もあります。いくつかのバリエーションの中からお選び下さい。