それではこれから釜を求めるのにはどの様な基準で選んだら良いのでしょうか。
勿論芦釜や天命釜が求められるならこれに越した事はありませんが現在それらを容易に入手し手頃に使えると云うものでもありません。
時代が下ると云っても鉄質のよい江戸中期までの釜も同様です。古作釜はその製法や使用する鉄の違いにより肌合、風合い錆の具合など時代を経たものの良さがあります。
古作釜はかつては、初底(うぶぞこ)と云い、鋳られた当時の物を好とする考えが主流でした。しかし痛んだ底のまま用い点前中に漏ってしまったと言う苦い経験は我々にもよくある事です。時代の釜の場合は一部銘品の例外を除き、底直しすなわち底を入れ替えたり修復をきちんとしてある釜の方がむしろ安心できます。
古作釜を求める場合は洩れや傷みなどを充分に確認できる古作釜の知識のあるお店で求める事が肝心でしょう。
またその前に皆さん自身がしっかりと釜の知識と見る目を持った目利きとなる事が肝要です。それには何処へでも出掛けて行って「本物」を出来るだけ数多く見、可能なら所持してみて覚えて行くものではないでしょうか。
これはあらゆる茶道具に言える事であり、また伝統を継承する物の多くはクッラシックが基本であり、その基礎の上に前衛が生まれるのではないでしょうか。
しかし、また最近では残念ながらこう云った「古作釜写の新作」を古作と偽って出回っているものもありますので、厳しいくらいの鑑識眼を持って望みたいものです。
現代では古い時代の釜より新作の釜の方が多く出回ってもいますし、価格も安価であるので(勿論例外もあり十職を始め有名作家の作品の中には非常に高価なものもあります)最初に求める釜としては新作を求める事が多いのではないでしょうか。