釜の熱い蓋を置く場所が必要となりますから「蓋置」がいります。蓋置は唐物の文房具等から見立てられたものも多く、墨台や筆架、利休好みと伝えられる「七種の蓋置」として上げられる「穂屋(火屋、火舎」「栄螺(さざえ)」「三つ人形」「五徳」「一閑(韓)人」「蟹」「三つ葉」等もそのよい例でしょう。唐銅物は、七種に止まらず「駅鈴(馬鈴)」「印」「笹蟹」「墨台」「輪」「夜学」など多種が見立てられていっています。
様々な形状の物を見立てたため、蓋を置くための「扱い」がある物も多く見受けられます。
竹の蓋置もやはり茶人が青竹を切り、用い出したのが始まりで「引切り」と称しますが、「在判」のあるものは青竹でなくとも用います。
利休ごろから「竹の蓋置」を盛んに用いるようになったと云われており、初期には「節の無いもの」後に「炉用」「風炉用」で節の位置を替え用いるようになった、とされています。これには利休が二人の息子(道安と少庵)に竹の蓋置の工夫を命題として預けたところ、一人が節を中程に切り、もう一人が節を上にして切った、そこで利休がそれぞれを「炉用」「風炉用」として好んだ、という伝説があります。些か信憑性に欠ける話なのですが一つの逸話として覚えておくのも良いでしょう。
今では節の無いものは「差し通」といい、細い建水(槍鞘、棒の先など)を扱う場合、建水のそこから取り出しにくくなるため「柄杓の柄」に蓋置を通して用います。
竹以外には「駅鈴(馬鈴)」はこの扱いをする決まりになっています。
「白竹蓋置で在銘の無いものは稽古用」と考えて下さい。本来新しければ青いものです、白くなったものは「使い古しの印」で客前に用いるものではありません。
「透かし」や「置上」「蒔絵」など細工のある竹の蓋置は陶器の物と同様に扱う方が良いでしょう。また特殊な竹を使用した物があってもそれに準じた方が無難でしょう。但しこれは、どちらかといったら「煎茶趣味」といって「抹茶(こういういい方はあまり好ましく思いませんが、煎茶道と区別するため)」の方では使わないものです。後に述べますが「竹の蓋置」は「侘びに適う」道具の代表といえるでしょう。
「陶器類の蓋置」も見立てから始まり唐銅物(七種蓋置など)の模倣などや「つくね」といった単純な物や、その可塑性により様々な工夫で色々な形があります。