ネットで楽しむ茶事十二ヶ月」=茶の12月
「朧八(ろうはつ)大接心」
接心風景 |
十二月に入ると、「茶禅一味」をひとしお感じられる行事「朧八大接心」が始まります。
十二月の異名「朧月の八日」の意味で本来、陰暦十二月八日の事を指します。この日は釈尊成道の日すなわち釈迦が悟りを開いた日とされています。
十二月一日から八日の朝までの間菩提樹の下、修行のすえ、悟りを開いて釈迦が仏になったことに習い、禅寺で禅僧が不断に昼夜を分かたず坐禅する行事です。これを剋期(こっき)摂心とも法会(ほうえ)成道(じょうどう)、臘八会(ろうはちえ)。成道会等とも称し禅の修行としては一年でもっとも厳しい期間とも言われています。
すべての茶人は在家、出家を問わず禅の修行「参禅」を致します。
たとえば、「一休宗純」に参禅した侘び茶の祖、「村田珠光」を筆頭に「武野紹鴎」は「大林宗套」、「千利休」は「笑嶺宗訢」と「古渓宗陳」、「古田織部」と「薮内紹智」は「春屋宗園」、「細川三斎」は「清巌宗渭」、「少庵」、「江岑宗左」は「蘭叔宗秀」、「元伯宗旦」は「春屋宗園」と「玉室宗珀」、「小堀遠州」は「江月宗玩」、「一翁宗守」は「玉舟宗璠」、「片桐石州」は「玉室宗珀」と「玉舟宗璠」、「山田宗偏」は「祥山宗瑞」、「随流斎」は「一渓宗什」、「覚々斎」は「大心義統」江戸後期になり「大龍宗丈」には「如心斎宗左」「川上不白」が参禅、七事式の成立に参加するなど歴代各流家元が殊に大徳寺歴代の高僧について参禅をする事が知られています。
大徳寺山門(金毛閣) |
しかしながら、我々一般市井の茶人はそんな高名な禅僧について参禅することは出来ない、とお考えの向きもあろうかと思いますが「茶名」と称している「庵号」や「宗名」も「茶の湯を通して禅の修行をした証」として頂けるという事なのです。ですからこの時期、禅に思いを馳せつつ、お茶の稽古に励む様にしたいものです。
どうやって思いを馳せるか?それは皆さんのお稽古場にある「お掛け物」「掛け軸」に書いてある多くは「禅語」です。
その意味を改めて深く調べてみること、そのことだけでも茶と禅の修行の大きな手助けになるのではないでしょうか。
禅板 |
ご自宅やお稽古場にに何本のお掛け物があるか、この際お手持ちのお軸や、色紙短冊に書かれたすべての語句を禅語の本などで調べてみる、とても良いことのように思えます。重ねて「字が読める」ことも大切な「修行」となることでしょう。何も禅堂へ入って座禅を組まなくとも茶人の修行は「茶湯」をすることだ、と多くの老師方にご教授を頂いています。
取り合わせとしては修行に使われる物や法具なども書院に飾ったりもします。
「警策」や「禅板(椅板)」などに禅語を認めた物を軸代わりに待合いに使用したり、「鉄鉢形建水」「木魚の香合」や「払子」「如意」などを飾り物にも使います。
朧八大接心は禅宗の行事ですので初祖「達磨大師」に因む物も多く登場します。「達磨炭斗」「不識水指」なども使われやすい物でしょう。
「冬の茶」
今月は茶の湯の季節では、圧縮されやすい短い「冬」の時期を迎えます。
陰暦ではおおよそ「一、二、三月」が「春」「四、五、六月」が「夏」「七、八、九月」が「秋」「十、十一、十二月」が「冬」になります。
先月お話しした「開炉」は本来「十月」の行事ですし、逆に「陰暦」ではまだまだ冬の最中の「十二月」中に新暦では「新年」を迎えることとなります。
さすがに世の中が「初春を寿ぎ・・・」なんて言ってる最中に「冬だ、暮れだ」とも言い難く、それ以降は茶の世界でも何となく「新暦」に日付を合わせてしまいたくなります。
故に「冬」は新暦で言う「十一月、十二月」の二ヶ月がそれ、といった雰囲気なのが現代です。
冬こそ楽しめる雪を趣向にした茶湯もあるのですが、「開炉」と「年末」に押し込められ純粋な「冬」を趣向として楽しむにはむしろ本当の寒さが来る「新暦二月」に譲ることも多いようです。