六月の掛物
「白雲自去来(はくうんおのずからきょらいす)」は『五灯会元(ごとうえげん)、巻四、霊雲志勤禅師』
「僧問、如何得出離生老病死。(僧問う、「如何が生老病死を出離することを得ん(どうやったら人生の苦しみから逃れることが出来ますか?)」
「師曰、青山元不動、浮雲任去來。(「青山元動ぜず、浮雲の去来するに任す(山の如くどんとかまえ、何があっても動じずにおればよいのだ)」。
「白雲抱幽石(はくうんゆうせきをいだく)」は『寒山詩』に依ります。
重巌我ト居 重巌に我れト居す
鳥道絶人跡 鳥道人跡を絶す。
庭際何所有 庭際何んの有る所ぞ、
白雲抱幽石 白雲幽石を抱く。
住茲凡幾年 ここに住むことおよそ幾年、
屡見春冬易 しばしば春冬のかわるを見る。
寄語鐘鼎家 語を寄す鐘鼎(しようてい)の家、
虚名定無益 虚名定まらず益無し
深山幽谷の中、騒々しい世間を離れて一人超然とした脱俗の心境を詠った寒山の詩の一節です。
「一滴潤乾坤(いってきけんこんをうるおす)」『景徳伝灯録』が出典です。
「僧問。如何是西來意。(僧問う、「如何なるか是れ西来の意(達磨がやってきた意味は何ですか?)」)
「師曰。四溟無窟宅。(師曰く、「四溟、窟宅無く、(達磨大師の坐禅した洞窟はどこにもないが)一滴潤乾坤。 (一滴乾坤を潤す)達磨大師の教えはやがて天下に広まって、私たちもまたその恩沢をこうむっていますよ。」
「一口吸尽西江水」
『碧巌録』に「不與萬法為侶。是什麼人。(万法とともと為らざる是れなんびとぞ。)祖云。待爾一口吸盡西江水。即向汝道。(祖云く。なんじが一口に西江の水を吸尽せんを待って、即ち汝に向かっていわん。)士豁然大悟。作頌云。(士豁然として大悟し、頌を作って云く。)十方同聚會。箇箇學無為。此是選佛場。心空及第歸。(これは是れ選仏場。心空及第して帰ると。)」とあります。利休は古渓和尚に参じて、この「一口吸盡西江水」の語によって悟りを開いたといいます。「松風供一啜」 と同じ境地と解釈されます。
六月の菓子
見た目も涼しげな葛菓子が登場すします。銘は田植えにちなんだものなどもあります。
主菓子=紫陽花きんとん 早乙女
葛饅頭 水牡丹 富貴(牡丹)氷室(水無月)など
干菓子=滝煎餅 時鳥煎餅 蟹
青楓 撫子 水など
六月の茶花
シモツケソウ(下野草)、アジサイ(紫陽花)、アマチャ(甘茶)、ウツギ(空木)ウノハナ(卯の花)、バイカウツギ(梅花空木)、ヤマボウシ(山法師・山帽子)、ハナイカダ(花筏)、ハンゲショウ(半夏生)、ホタルブクロ(蛍袋)、オカトラノオ(岡虎の尾)夏蓬、夏薊、昼顔、虎尾草、孔雀草、釣鐘草、雪の下、蓼
額紫陽花、青すすき
六月の銘
短夜(みじかよ、明易し)、競馬(賀茂競馬、競べ馬、)、花橘、朱欒の花、橙の花、柚の花、柿の花、葵、紅の花、鈴蘭、入梅(梅雨に入る、ついり)、梅雨(つゆ、ばいう)、五月雨(さみだるる)、出水、五月闇、黒南風(白南風)、黴(黴の香、黴の宿)、苔の花、魚梁(やな)、鰻、鯰、濁り鮒、蟹(磯蟹、山蟹、川蟹、沢蟹)、蝸牛蛞蝓、雨蛙、河鹿、杏、実梅(青梅)、紫蘇、枇杷、早苗、代田、田植、早乙女、植田、 蛍(源氏蛍、平家蛍、初蛍、蛍火・蛍合戦)、蛍狩、螢籠、田亀、源五郎、目高、浮草水草の花、藻の花、藻刈、手長蝦、田草取、草取、夏の川、鮎(鮎釣り、鮎狩、鮎掛、鮎の宿)、鵜飼(鵜舟、鵜飼火、鵜篝、 鵜匠)、川狩(網打)、夜釣、夜焚釣堀、鰺、虎魚、鯒、黒鯛(茅海、ちぬ釣)、鰹(鰹舟、鰹釣)、葭切、翡翠、糸蜻蛉、蜘蛛の囲(蜘蛛の巣)、守宮、蚊帳、蚊遣火(蚊遣、蚊火)、蝙蝠、青桐、葉柳、南風(みなみ、大南風、南吹く、はえ)、青嵐、風薫(薫風)、白夜、夏至、老鶯、閑古鳥、仏法僧、筒鳥、駒鳥、瑠璃鳥、夏木、夏木立万緑、緑陰、木下闇、青葉、夏の蝶、夏野、夏草、草矢草茂る、若竹、竹の皮脱ぐ竹落葉、雹、水鶏、青鷺、五月晴、暑さ、夏衣、青簾(葭簾、絵簾、玉 簾)、葦簀、葭戸、籐椅子夏暖簾、
飛鳥川 (瀬戸金華山茶入)
雨雲 (黒楽茶碗 光悦作)
蟻とをし (竹茶杓 覚々斎作)
伊予簾(古瀬戸茶入 中興名物)
岩根 (黒楽茶碗 長次郎作)
うき舟 (竹茶杓宗徧流十世四方斎作)
浮舟 (香炉釉楽茶碗 覚人作)
鵜舟 (赤楽茶碗 左入作)
さなへ (竹茶杓 覚々斎作)
五月雨 (黒楽茶碗 長次郎作)
晒井 (赤楽茶碗 宗入作)
さるすべり(竹茶杓 山科宗甫作)
沢辺蛍 (黒楽茶碗一入作)
獅子 (黒楽茶碗 道入作)
七月 (竹尺八花入 宗旦作)
清水 (瀬戸真中古茶入)
白鷺 (赤楽茶碗 長次郎作)
青山 (竹一重切花入 江岑宗左作)
瀬見の小川(竹一重切花入玄々斎作)
燕児 (黒楽茶碗 道入作)
なでしこ (赤楽茶碗 長次郎作)
虹 (赤楽茶碗 道入作)
布引 (竹二重切花入 不休斎作)
(釘彫伊羅保茶碗)
白雨 (萩茶碗)
白雲 (赤楽茶碗 六閑斎作)
氷室 (赤楽茶碗 不休斎作)
(粉引茶碗)
姫瓜 (唐銅花入)
蛍 (瀬戸春慶茶人)
まこも(黒楽茶碗 長次郎作)
水鳥 (刷毛目平茶碗)
やぶれがさ (青井戸茶碗)
山家夏(竹茶杓 玄々斎作)
山雀 (瀬戸後窯茶入)
山端 (志野茶碗)
緑蔭 (黒楽茶碗 惺入作)