石州流を学ぶ人のための茶道具基礎知識7 棚物点前
棚点前は平点前が済むと次ぎに進む段階で行われる点前です。まずは「小棚」の習得から始めます。茶室は、四畳半構をはじめ、広間で行う点前です。台目席や小間の席では行ないません。
棚物は台子から生まれ侘茶→「運びの茶」へと向かう過程であるとも考えられています。史実はともかく、平点前より格式が上の点前、ということになります。
またお点前上「道具を運ぶ回数を減らせる」点前になります。
棚の部として上げられる棚の種類と分類
棚物として
ランダムに記載されている棚物を使い方によって整理してみましょう。加えて流儀として使っても良いと考えられる「利休好の棚」あるいはそれ以前から使われている棚も合わせてみていきましょう。
Ⅰ 炉、風炉ともに用いる棚としてあげられる物
1.利休好 桐木地丸卓
利休好の桐木地二本柱の一重棚。地板裏に足が三つあります。柱は天板、地板の内側に立てられ、柱の上下とも鰭が左右に出ています。
風炉、炉また、各流儀ともに用いることができる、もっとも基本として用いる棚です。
Q 石州流では、なぜ利休好桐の丸卓ばかりもちいるのか?
利休の登場により様々な小棚が創造されるようになります。桐の丸卓、角棚(四方棚)、山里棚、三重棚、葭棚、烏帽子棚、などその多くは利休の侘茶を反映してか、桐を使用した木地の棚です。
しかし、お稽古に限らず、桐の丸卓を多用しているのはなぜなのでしょうか?
A まず「利休好桐木地丸卓」について触れてみましょう。この棚はほとんどの流儀で棚物の基本として用いられる棚であり、他の利休形、利休好の棚に比べてもその使用頻度は高いと言えます。ですから生産量も多くコストが下げられ普及したため、と考えられます。
角棚(四方棚)、は裏千家と表千家でも見解が異なります。裏千家では幅の広い方を「角棚」と呼び、炉専用としていますが、それに比べやや幅の狭い「四方棚」は炉風炉共用としており、どちらも「利休好」として使用しています。
表千家では、幅が広く角も直角のもののみを「利休好」と厳格に規定し、小幅のものの存在は否定しています。
このように議論が分かれる部分も有りまた、小棚としては大ぶりなため丸卓ほどの普及しませんでした。
同様に他の利休好とされる棚に関しても否定的な意見を定説としています。
例えば「桐木地三重棚」は覚々斎好として利休の好説を否定した見解です。とはいえ水屋で道具をのせていた棚から好んでつくられたと伝えられ、二重棚もこの棚がもとになっているとしながら、もっとも古い好として「久田宗全好一閑」を挙げています。
しかし、これでは形状も技法も原形が突然発生したことになりますのでいささか無理があるように感じられます。
ここでは裏千家のように「利休好が最初」と考える方が自然でしょう。同様に他流に伝来した棚類は一切俎上に載せないのも「表流」のようです。
官休庵に伝わる「烏帽子棚」、藪内剣中に伝えた「山里棚」などは同門における使用に関しては否定的なようです。
同様に、石州流でも考えたとしたら「利休好桐木地丸卓」のみということになってしまいます。
その点裏千家ではフレキシブルに対応しています。最新の「教則」本でもこれらの記述があります。もっとも流儀、家元でのお考えですから、一概に否定は出来ませんが、視野を狭めることがあってはならないような気がします。
「石州流では他の棚は使わない!」などとかたくなに思ってらっしゃる方もいるのですが全ての流儀は「利休流」なのですから「利休好桐木地丸卓」ばかりでなく「様々な利休好の棚」を用いた方が良いということになるのです。
2. |
上下四角い棚 |
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3. |
他の組合の棚 天板が、地板がと団扇(だんせん=うちわではありません。)を組合せ柱は閉じた扇三本という意匠の棚です。 |
二重棚
4. |
上の二重棚 紹鴎好水指棚 利休好烏帽子 片桐石州公好上二重棚 同、桐香狭透水指棚(以上四本柱)
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石州好上二重棚 |
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5. |
下の二重棚 笈棚(桑小卓) 片桐石州公好総桐春慶塗水指棚(独鈷棚) |
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三重棚
6. |
利休好三重棚= 栖楼棚ともいう説有り
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簞笥
利休好旅箪笥
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Ⅱ 炉にのみ用いる棚
一重棚
利休好四方棚(二本柱)、
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袋棚
地袋棚 |
紹鴎棚
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猿曳棚 |
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違棚 |
袋棚(志野棚、利休袋棚) |
台目棚
利休好葦棚(よしだな)(芦台目棚) |
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片桐石州公好 葭棚 |
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