石州流を学ぶ人のための茶道具基礎知識1 割稽古
茶道具を説明する本や書物は数限り無く出てはいますが、どゆう茶道具をどう求めたらよいのかを語られた本は少ない様に見受けます。
ましてや石州流に関係するお茶道具を説明し、お茶道具を求める際にどんなところに気を付けたらよいのかなど皆無ではないでしょうか。
単にお茶道具といっても多岐に渡り一口では説明がつかないのですが身近かなところから基本となるポイントをお話することにいたしましょう。
Ⅰ. 持物
まずは持ち物から揃えましょう。
茶湯の稽古に通うには、一通りの携行品(=懐中品、帛紗、懐紙、扇子など)は揃えられたと思います。というのも かつて存在した大規模茶の湯カルチャー教室ではこれらの物まで貸し出し、手ぶらでお茶の稽古を謳っていましたが、これでは茶湯を嗜んだ一つの証、茶会へも行けません。
高価な物でなくとも、まずは一通り揃えてみましょう。
お稽古を始めるために必要な物には、帛紗、扇子、懐紙、菓子切、古帛紗、出帛紗、帛紗挟、数寄屋袋、などがあります。
扇子
席入り、床の拝見、挨拶のときなど、膝前に置き用います。稽古や茶会などには常に携行し、普段は帯に挿しておき、挨拶の時には自分の前に置き結界としたり、席中では自分の後ろに置いて使うなど自分のエリアを定める象徴ともされます。
茶湯での必需品です。
石州流で用いる扇子
男女とも石州流用の白扇です。
石州流男性用白扇
石州流女性用白扇(男性用より小振り)
帛紗
点前で道具を清めるときなどに使う。
使帛紗ともいい、服紗、袱紗、不洗布などとも書きます。
石州流越後怡渓派の寸法が決まっており、大・中・小の三種類があります。
『手引きの糸』 新潟版(百二十四頁)
服紗寸歩
一尺 | 九寸五分 | 九寸 | ||||
大 | 中 | 小 | 雪吹帛紗 九寸四方なり | |||
一尺五分 | 一尺 | 九寸五分 |
『手引きの糸』三十三年版「平常の心得」
帛紗
大 長さ 一尺五分(31.7cm)
巾 一尺(30.2cm)
中 長さ 一尺(30.2cm)
巾 九寸五分(28.8cm)
小 長さ 九寸五分(28.8cm)
巾 九寸(27.2cm)
吹雪帛紗 九寸(27.2cm)四方
とあります。
皆さんも一度、お使いの帛紗を計ってみられて、流儀のものと一致するのかお調べになることをおすすめします。もちろん洗わないで下さいね。
男性は紫、女性は赤を原則使用します。
江戸中期石州流越後怡渓派新発田藩の茶堂渋谷意斎の著書『秘事石州流茶道侘茶事大概』の中に「銘水會の時、遣い和巾、あさぎ、出し帛紗は、きから茶(黄唐茶)也。」とあり、『怡渓派和尚三百箇条』には「単ふくさも古来有。柔なる段子、北絹の類、手内に握り折目付かぬもの好。ショハというものにてもする。色も昔は茶色、浅葱の類にても用ゆ。利休より紫色也。」として出帛紗ではなく点前帛紗・使帛紗としての使い方を説明しています。織物の緞子や北絹、紹巴でも帛紗を造ることはあるが「単(ひとえ)」であるとしています。唐物帛紗として点前に用いる原形はこういったものに現れているようです。石州流でも色違いの帛紗を用いることもあったようです。
「茶湯には茶巾、帛紗に、箸、楊、枝心と柄杓、新しき良し」です。
出帛紗
出帛紗は、濃茶のとき茶碗に添えて出したり道具に添えて出したり、拝見のときなどに使用し主、客共に常に懐中しておきます。
用いられる裂地は名物裂などで、大きさは、使い帛紗と同じ大きさのものです。三種寸法があるのですが手前に用いない頃から「大寸」がふさわしいようです。
古帛紗(寸法が五寸二分×五寸で出帛紗より小さい)をよく見かけますが、これは裏千家、玄々斎による発明品で裏千家以外用いる事はありません。
懐紙
菓子をいただくときに使用します。
その昔、貴族は常に懐に紙を畳んで入れ、ハンカチのような用途の他に、菓子を取ったり、盃の縁をぬぐったり、即席の和歌を記すなどの用途にも使用し、当時の貴族の必需品でした。
懐紙は「ふところがみ」や「かいし」、また、畳んで懐に入れる所から「たとうがみ」、「てがみ」と称し、後には和歌などを正式に詠進する詠草料紙を意味するようになりました。
男性は檀紙を、女性は薄様の斐紙を使用するのが慣習となり、正式の詠草料紙には色の違う薄様を二枚重ねて使用しました。
手漉きの美濃紙を小菊紙といい、これを懐に入れて茶席などで使ったことから「懐中の小菊紙」=「懐紙」となったようです.茶会に行く時に持って行くものを織り込んだ和歌があります.
「茶にゆかば 小菊に帛紗 扇子足袋 茶巾手拭 香と小袋」この小菊が懐紙のことです.
紙の単位一帖は四十八枚でしたが、現在は三十枚が一束のなっています。
流儀により、違いはありませが、石州流専用にデザインした懐紙(女性用)があります。
→ 茶道具一覧(石州流懐紙)
数寄屋袋・懐紙挟
近世の発明品です。お稽古はもちろん茶会にも着物で行かなくなり、結果「懐中」がなくなり行き場を失った「懐中品」が存在場所を見出したところ。というのが本項での解釈です。
流儀によりこれを必ず持参し席中で使用するように指導し、茶事にも用いるところがあるようですが、
因ってこれを女性はよく「お太鼓」に入れて居るのを見かけます。「ランドセルじゃあるまいに」と怒られたものです。
もちろんお稽古には便利なものですし、茶会などにも用いて構わないのですが、茶事で云えばあくまで「袴付け」までの携帯品、風呂敷に包み「乱れ籠」に入れておくものと心得ましょう。
席中に必要なものは「懐中に」が原則です。
帛紗挟
茶席に入る際、上記のものを一つにまとめる袋用の物。
数寄屋袋
茶席に入る際、上記のものを一つにまとめる帛紗挟みより大きめの物入れ。
楊枝入・茶巾入・袖落とし・残滓入・足袋入・風呂敷
そのほか茶会や茶事には、持って行くと便利なものも多くあります。
「楊枝と楊枝入」は茶事であれば先に述べた黒文字は亭主が用意しますが、大寄せの茶会などでは自分用の楊枝を持参するのが一般的です。但し、黒文字が用意された茶会であえて持参のものを用いることは非礼に当たります。足袋を改めるのは袴付けや寄付待合で行いますので道中の上着など席中で不用なものと一緒に風呂敷で包み、乱れ籠などに置いておきます。
菓子切、楊枝
菓子をいただくときに使用します。象牙や、金属製の物、竹製品など様々です。
楊枝入れに入れて携行しましょう。
などがあります。