炭道具
茶人としては絶対欠かせない心得の一つが「炭手前」です。
炭手前は茶湯でもっとも大事な「湯相(ゆあい)・火相(ひあい)」を整えるためのものです。
1. 炭斗
炭手前で亭主が最初に持出す道具と云えば「炭斗(すみとり)」です。
利休以前の好物はないようですが、これは紹鴎、利休の頃になり、人に見せる「炭手前」が形作られるようになったといったことが主な理由ではないかとも考えられます。
炭斗には、産地別に大きく分けて唐物・和物の二種があります。
「利休好」では「鱗籠」(主に風炉用)「油竹」「達磨」(主に炉用)があります。他に「台子炭手前」に用いる「神折敷」(利休好は杉木地、元伯宗旦好は一閑塗)や祝いの席、初釜などに用いる「炭台」がありこれは千家七事式の「廻り炭」にも用いられます。
和物炭斗の材料は竹・籐・藤蔓・蓮茎などを用い、形状は唐物狙いですが、どちらかといえば編み方・組み方は大まかで、ずっとざんぐりとしています。 籠類の他に、瓢・一閑張・蒔絵・曲物・指物などがあり、ときには冊屑箱(さくずばこ)・茶撰籠(ちゃよりかご)・散華皿(さんげざら)・小さい箕・炮烙(ほうろく)などが応用されることもあります。
一般には「風炉に菜籠、炉に瓢」という言葉があげられるでしょう。
風炉に籠の炭斗、炉用として瓢(ふくべ)の炭斗が良いという意味ですが、菜寵は籠類の総称です。唐物・和物ともあり、今は四季を通じて用います。
風炉の炭は炉用に比べて細く量も少なめ、そこで風炉用の炭斗は小ぶりなのは当然ですが背が高いものが好まれます。炉の場合、畳より低い位置に炭を次ぎますが、風炉は上へ次ぐため背の高いものが選ばれるようです。
唐物の炭斗は本来見立てですので大きさに従い炉、風炉を見極めて頂いてもまた兼用にされても良いと思います。
利休好
利休好には油竹・鱗籠・達磨・瓢・木地炭台・菊置上神折敷などの炭斗があります。
元伯宗旦好
葛桶・同小形・一閑秕目(へぎめ)神折敷・入子神折敷・利休所持桂川籠・算盤粒・竹組達磨・籐組達磨
2. 神折敷(かみおしき)
真の炭手前(真台子の炭)に用いられます。他には献炭に用いるものとされています。
利休形は杉木地、元伯宗旦形は一閑でつくられており、それ以外に桐・桧などの木地のものがあります。
寸法はだいたい高さが約七・九センチ(二寸六分)、さしわたし約二十一セソチ(七寸)で、角を曲げて、正面に桜の皮などの綴目をみせています。
→ 商品一覧・神折敷
3. 炭台
炉専用で、桧木地でつくり、さしわたし約二十九・七センチ(九寸八分)角、高さ約三セソチ(一寸)の角切りの線と、約七・三センチ(二寸四分)の裸足を左右に縦につけ、総高さ約十・三センチ(三寸四分)です。ちょうど三宝の低い形のようであり、これを使用する際には、綴目を向うにします。
主に炉で炭所望の際や、これは千家七事式の「廻り炭」にも用いられます。奉書を敷、炭を組み持ち出します。古くは炉の真の炭に用いられたこともありましたが、今では用いません。
流儀により、正月の炭飾などに用いても良いと思います。
→ 商品一覧・炭台
4. 箱炭斗
お稽古のとき一番活躍するのではないかと思うものに「箱炭斗」があります。片手で(正式には両手で持ちますが)火を直せるものを一式運べる便利さがあります。
基本的には点前用ではないのですが、「きちんときっちり組んだ切り炭」に「長火箸」を立て「水屋鐶」を通し「板釜敷」を反対側にひっかけ「掴み羽箒」を載せ「香箱(炉の時は香溜)」を仕組みさっそうと持ち出す。これは「夜咄の茶事」などの「止め炭」には欠かせない表道具にすらなります。寸法通りに切った炭ですと炉、風炉ともにきれいに収まります。
「長火箸」は芋紐巻きの火箸で炉、風炉で長短二種ありますが、長い方で兼用すればよいでしょう。
夜咄茶事用としての「箱炭斗」があります。水屋用より小ぶりなものが多く本来「老人用」とも言われていますが、夜咄茶事の「止め炭」に用いると洒落たものとなります
→ 商品一覧・箱炭斗
5. 羽箒
炭道具の中でもよく目立ち、脚光を浴びる物に「羽箒」があります。
「青鸞」を最上とし「朱鷺」「鶴」「鷲」「鷹」「雁」「白鳥」「鴻鳥」「鷺」など今では貴重な大型鳥類の羽根を使用します。
炉風炉・本逆・八炉などにより右羽、左羽を使い分けるほか,「真の炭」用には左右同じ「諸羽(もろは)」を用いる事もありますが、兼用ではありません。
→ 商品一覧・羽箒