どうも一般のお稽古場では水屋のお道具や所作などは比較的おろそかにされがちなように見受けます。
お茶の動作は水屋から始まるとも云われ非常に重要な場所にも拘らず省みられることが無いように思います。
水屋での動作や茶の湯の準備に必要な道具が水屋道具なのですが、全てとは云いませんが揃えておいた方が何かと便利ですし水屋飾りも茶室、道具のしつらえの一つと言ってもよいくらいです。
1.花台、炭台=文字どおり花の台、炭の台ということですがそれぞれ、花所望や廻り炭などに使用する外、花台などは日頃の花を活ける時にも使用します。花小刀と花水次も添えて用意しましょう。
2.茶篩箱(利休好)=まず滅多にお目にかかることのない水屋道具の一つではないでしょうか。
お茶を篩う物といえばステンレスやブリキの缶と決まっていると思っていらっしゃるかたが大部分だと思います。
もっともお家元筋でも最近はお目にかかりませんが、口切りの茶事などでは欠かせないものとされ、茶臼で挽いている音が済むと水屋でカタカタと茶を篩う音がするものなのだそうです。
篩い自体も網は馬のしっぽの毛で作られていた物が本来ですが、最近はステンレス製の物も出回っています。値段も半分くらいなのでこちらの方を多く見かけます。また小型の物もでまわっていますがこちらは普段づかいでもよいでしょう。
お茶会などで大量に篩う場合など中にビー玉などを入れておくと早く篩えます。
3.台十能=水屋で起きた炭を茶室に運ぶ、また使い終わった残りの炭を片付ける時に使います。火起こしも添っている場合がほとんどですが、七輪などで起こし単独で使用します。
4.枝炭箱=枝炭を入れておく専用の木箱
5.半田=筋半田、巴半田が一双、炉中の底を取り整えるための物、炭所望、廻り炭等に使用します。
6.箱炭斗=お稽古のとき一番活躍するのではないかと思うものに箱炭斗(すみと、ではない、とり)があります。片手で(正式には両手で持ちますが)火を直せるものを一式運べる便利さがあります。きちんときっちり組んだ切り炭に長火箸を立て水屋金丸を通し板釜敷を反対側にひっかけ掴み羽箒を載せ香箱(炉の時は香溜)を仕組みさっそうと持ち出す。夜咄の茶事などの止め炭には欠かせない表道具にすらなります。寸法通りに切った炭ですと炉、風炉ともにきれいに収まります。
火箸は芋紐巻きの水屋火箸は炉、風炉で長短二種ありますが、長い方で兼用すれば十分でしょう。
水屋釻は「真鍮製」の物を必ず用意しましょう。鉄より柔らかく釜の釻付を痛めることが少ないためですが特に大きな釜の場合は釻が伸びて外れないためにも合わせ目を上にして持ちましょう。
板釜敷には片面に庵名や名前を書入、表裏をはっきりさせておき釜を載せる場合署名を下にして使用する習慣を付けて置くと畳付きが汚れません。
掴み羽箒は最近駝鳥の羽の物が出回りましたがさすがに掃きにくくやはり白鳥の物がお勧めできます。
香箱は木製で香を入れておくものですがお香会社の包のまんまというのは頂けませんものね。
炉の時の香溜めは陶器の香壷となります。これは特別な物でなくともお香が壷に入った物を求めそれに入れておけば充分でしょう。
7.茶掃箱、茶通箱=茶通箱というとお点前に使用するものとお考えでしょうがもともと、水屋用の茶の通い箱の事でしたので桐木地で作られるのが普通です。茶掃箱は文字どおり茶を茶入や茶器に入れる時に使用するもので、中には茶漏斗と呼ばれる木地の漏斗や茶篩い、茶匙、小羽等が入っています。茶漏斗の中にはいている木地、または塗りの茶碗を小さくしたような器は茶秤で濃茶の一人前分が計れるようになっています。
8.水屋七拭=茶巾、帛紗、手、手巾、布巾、雑巾、水屋手拭いを指します。茶室で使用する正式な布巾は麻製、雑巾は木綿製、水屋手拭いは水屋の柱に専用の竹釘を打ち掛けておきます。
9.助炭・焦縁
釣釜の際に弦がちょうど出るように透き間をあけたもの、割助炭といって同じ目的で焦縁が二つに分離して釜を釣ったままでも焦縁が掛けられるようになった物などがあります。
また全く違った感じの物もあります。それは楽焼や京焼で作られたものでこれは炉縁を覆いませんが、動物や何かを模った物で釜を掛けたまま炉を覆ってしまうものです。
裏千家の眠獅子などは傑作で、あくまで水屋道具なのが惜しいくらいで印象深い作品でした。