石州流を学ぶ人のための茶道具基礎知識4 水屋道具
水屋
水屋は茶室、稽古場になくてはならない付属施設です。茶席で用いる道具を全て用意されており、主に茶道口より通ずる部屋、あるいは廊下などに設けられます。
水屋とは、茶室の勝手、台所、茶事の用意をととのえるところであり、稽古の場合には点前作法に必要な道具をととのえる場所であります。
単なる道具の置き場所ではなく、あくまでも一服のお茶を点てるための準備をするところです。
したがってそのために必要な道具以外のものを並べて置くことのないように心がけなければなりません。
理想的な水屋
条件により必ずしも整った水屋を設けることは難しい場合もあると思いますが、逆に、立派な茶室があったとしても付随する水屋がなかったり、あっても機能的でなかったり役割が充分に果たせなければ意味がありません。
たとえ「置き水屋」であってもその機能が果たせ、茶室との関係がよければ「よい水屋」といってよいのではないでしょうか。
そしてそこには、必要な水屋道具を揃えた茶室のバックヤードとしての機能を持たせたい物です。その配置を「水屋飾」ともいいます。
水屋道具
薄茶平点前のところで「これでお茶は点てられる」の書きましたが、実際は、「準備をするための道具」も必要になります。
合わせて、水屋で使う道具類もありますので、必要なものからリストアップしてみましょう。
水屋道具 1
1. 抹茶ふるい、茶掃箱(ちゃはきばこ)
お抹茶は使う前に必ず篩ってから用います。缶や袋から直接使うと「ダマ(固まりや茶団子)」が出来てしまいます。お茶篩を用いるのですが、急いですると静電気でかえって大変なことにも。
2. 茶巾盥(ちゃきんだらい)・茶碗盥(ちゃわんだらい)
「茶巾盥」は水屋の簀の子に置かれ茶碗、茶巾を清める際に用いられます。木製の桶で出来た物、唐銅、モールなど金属製のもがありますが、水屋道具とはいえさすがにプラスチックの桶は絶対やめておきましょう。
3. 水屋七拭(みずやななぬぐい)
「水屋七拭」といって茶室で使用する正式な布巾で
「茶巾」「帛紗」「手」「手巾」「布巾」「雑巾」「水屋手拭」を指します。
水屋では専用の「布巾」「雑巾」水屋手拭」を用意しておきましょう。
「布巾」は麻製「雑巾」は木綿製を正式とします。
「水屋手拭」は水屋の柱に専用の竹釘を打ち掛けておきます。
まずもって清潔を第一に、よく洗った物を用いましょう。
→ 茶道具一覧・水屋道具(水屋七拭)
4. 台十能(だいじゅうのう)・火熾(ひおこし)・火消壺
水屋で起きた炭を茶室に運ぶ、また使い終わった残りの炭を片付ける時に使います。「台付き十能」の略で本来は「鉄製」ですが、最近は「銅製」の物も見受けられます。「火起こし」も添っている場合が多いのですが最初の点火のみ使用し、台十能に直接、下火を入れ席中に持ち出し使用たほうが良いと思います。
火を熾すとき、黒い新しい炭だけを火を漉しに入れガスに掛ける人を見かけます。なかなか起こらない上に均一に火もつきません。火消し壺の中から消し炭を取りだし一緒に火をつけると五分程度でたちまち火がつきます。「七輪」に移すとより効果的です。
火消壷
勿論使い終わった炭火の後始末には欠かせない物ですが、茶会などで乱暴に水を掛け炭火を消す人を見かけます。火消し壺の中の「消し炭」は再び重要な役目をします。
5. 水屋瓶・掻器(かいげん=水屋柄杓)・水漉(みずこし)
古くは木地の手桶や水屋桶が用いられましたし、紹鴎は「井戸の釣瓶」をそのまま水屋用の水溜として用いたこともあるといわれます。
現在では陶磁器の瓶を用いることが多いようです。水道が普及した現在でも、扱いとして「水屋甕(壷)」から水を用いて扱う事が水屋の基本でしょう。水屋には水をたっぷり張って必ず用意しておきましょう。
水屋瓶から水を掬うのに用いるのが「掻器」水屋柄杓とも言います。
水を「水屋瓶」に入れるときまたは「水屋甕」から他へ水を移すときに用います。
「水漉」は上水道の普及した現在でも水を綺麗にする姿としても用いましょう。
6. 釜据・底洗
釜の手入れに用います。釜の使用前後には必ず用いましょう。
釜据は菱に置き使用します。
「釜据」「底洗」も必ず竹釘に掛けておいてください。
7. 箱炭斗(はこすみとり)
お稽古のとき一番活躍するのではないかと思うものに「箱炭斗」があります。片手で(正式には両手で持ちますが)火を直せるものを一式運べる便利さがあります。
「きちんときっちり組んだ切り炭」に「長火箸」を立て「水屋鐶」を通し「板釜敷」を反対側にひっかけ「掴み羽箒」を載せ「香箱(炉の時は香溜)」を仕組みさっそうと持ち出します。
箱炭斗は「夜咄の茶事」などの「止め炭」には欠かせない表道具にすらなります。
8. 底取・長火箸・炭切溜
風炉や炉の中の灰を出し入れするのみ用いるものが「底取」です。炉用風炉用の区別はありますが、炉用での兼用も可能です。炭所望や廻り炭の時には客前にも持ち出す大事な道具です。
「長火箸」は水屋から席中の風炉や炉に下火を入れたり、途中で火を直すときなど、必要不可欠な道具です。底取同様、炭所望や廻り炭の時には客前にも持ち出す大事な道具です。
「炭切溜」は表千家の水屋には不可欠な「利休好」の水屋道具の一つです。
炭手前で用いる「道具炭」を水屋に確保しておくための場所でもあります。
石州流では多くの異なった寸法の「道具炭」を用います。先に挙げた「箱炭斗」ではそれらを効率よく分類して収めることは困難です。
そこで、この「利休好炭切溜」へ整理して並べておくことにより、炭を組む際にも短時間で的確な炭を選定しやすくなります。
石州流茶道家の方には必需品となることでしょう。\
9. 置水屋
条件により必ずしも整った水屋を設けることは難しい場合もあると思いますが、逆に、立派な茶室があったとしても付随する水屋がなかったり、あっても機能的でなかったり役割が充分に果たせなければ意味がありません。たとえ「置き水屋」であってもその機能が果たせ、茶室との関係がよければ「よい水屋」といってよいのではないでしょうか。そしてそこには、必要な水屋道具を揃えた茶室のバックヤードとしての機能を持たせたい物です。
茶室や住宅とトモに「水屋」を設えることが困難な場合「置き水屋」で機能をまかなうことがあります。
置水屋には据え置き型、移動型ともいえる水屋です。大きく分けて戸棚形と組立形があります。
水屋道具 2 その他水屋に備え付けておくもの
花台・炭台・半田
文字どおり花の台、炭の台ということですがそれぞれ「花所望」や「炭所望」などに使用する外、花台などは日頃の花を活ける時にも使用します。
花台は赤杉の剥ぎ板で曲物で造られ、炭台は面取りの檜材です。「炭台」を上「花台」を下にして置けば重ねて水屋の棚に上げられます。
『手引きの糸』三十三年版では足付の台が描かれています。これは「花台」をあらわしています。
「花所望」や日頃の花を活ける時にも使用します。「花台」には「花小刀」と「花水次」を添えて用意しましょう。同じく「炭台」は主に「廻り炭」に用いることが多いのですが、古くは炭所望の歳に用いました。
炉の「炭所望」で使用する「筋半田、巴半田」を一双とし楽焼などで出来ています。釉薬のかかった物が「筋半田」素焼きの物が「巴半田」と呼び炉中の底の灰を取り、整えるための物です。
「炭所望」「廻り炭」等に使用します。「底取」「長火箸」を添え用意しましょう。
※石州公晩年の茶会記には後炭所望がほぼ毎回記載されています。
助炭・焦縁・雪洞なども揃えておきたい物です。
→ 茶道具一覧・水屋道具(助炭・焦縁・雪洞水屋)